マレー語の人称代名詞 (Kata Ganti Nama Diri)

一人称

マレー語の人称代名詞には、日本語と同じでいろいろな種類がある。時には使い方を間違えると失礼になることもあるので、注意が必要。

人称代名詞はマレー語で、”Kata Ganti Nama Diri” という。

わたし(一人称・単数)

マレー語人称代名詞

マレー語には、自分のことを表す一人称単数(Kata Ganti Nama Diri Pertama Tunggal)として6種類の単語が使われている

saya(私)

覚えておけば間違いのない日常会話でよく使われる形 。

特にかしこまった席や公の場所で使われる。初めて会う人や話し相手が目上の人の場合必ず “saya” を使うように。

aku / daku(僕・俺)

身近な友達同士などの親しい仲で使われる形。歌の歌詞などによく出てくるほか、神に祈るときに使われるのもこちら。

通常は “aku” が使われるが、一つ前の単語が “n” で終わる場合、その後の “aku” は “daku” に変わる(例2を参照)。

例1)Aku tidak perna pergi ke Kuala Lumpur(僕はクアラルンプールに行ったことがありません)

例2)Encik Ibrahim memberikan daku sebuah buku.(イブラヒムさんが1冊の本を僕にくれた)

beta / patik(王族に関係する言葉)

王(スルタン)や王族が民に対して話すときに使われるのが “beta”。

逆に民が王(スルタン)や王族に対して話しかける時に使われるのが “patik”。

hamba

普段名詞として使われる “hamba” には、「奴隷・僕」という意味がある。人称代名詞として使う場合は、自分を低める敬語の意味合いがある。日常会話ではほとんど使われない。

わたしたち(一人称・複数)

人称代名詞マレー語

一人称の複数形( Kata Ganti Nama Diri Pertama Jamak )には2つの形がある。使い分けはとても重要である。

次の2つの単語は、どちらも「わたしたち」と訳されるが、日本語の感覚にない使い分けが必要なので、慣れるまで時間がかかるかもしれない。

kami(話し相手を含まない「わたしたち」)

kita(話し相手を含む「わたしたち」)

例えば、日本人の事をマレーシア人に説明する場合、話し相手は日本人でないので、”kami” を使う。

例1)○ Kami makan sashimi.(わたしたちは刺身を食べます)

例2)× Kita makan sashimi.

“kami”と”kita”の使い分けに注意

例1)× “Kita tinggal tidak jauh dari sini,” kata Taro dan Hanako kepada Jiro.

例2)○ “Kami tinggal tidak jauh dari sini,” kata Taro dan Hanako kepada Jiro.

日本語に訳すと、どちらも「”私たちはここから遠くない所に住んでいます”、と太郎と花子は次郎に言った。」となるが、例1は間違い。

遠くない所に住んでいるのは、話しかけている太郎と花子だけで、話し相手の次郎は「私たち」に含まれないから。

二人称

あなた(二人称・単数)

マレー語人称代名詞

マレー語には、話し相手のことを表す二人称単数(Kata Ganti Nama Diri Kedua Tunggal)として6種類の単語が使われている。

丁寧さ、親しみ度が単語によって違うので、神経質になりすぎる必要はないが、使い分けてみよう。

anda

TV・広告などで見かける、公の場で不特定多数に使える一番丁寧な形。手紙を書く時にも使われる。

awak

友達など親しい仲の人に対して幅広く使える。基本的には目下の人に対して呼びかけるときに使われる。

kamu

“awak” と同様、親しい仲の人に対して使う。大人が年下に向かって呼びかけるときに使われる。

you(英語のyou)

英語が浸透しているマレーシアだけに、突然英単語が登場することがある。その一つがこの “you”。どんな相手に対しても気兼ねなく使える形。文法的には正しい訳ではないが、若い人を中心に幅広く使われている。

engkau / dikau

とても身近な友達同士などの親しい仲で使われる形。神に祈るときに、神に対して呼びかけるのにも使われる。

通常は “engkau” が使われる。ただし、一つ前の単語が “n” で終わる場合、その後の “engkau” は “dikau” に変わる(例2を参照)。

例1)Kawan engkau berada di Johor Bahru.(あなたの友達はジョホールバルにいます。)

例2)Ayah rindu akan dikau.(お父さんがあなたがいなくて寂しがっています。)

あなたたち(二人称・複数)

kalian

二人称の複数形(Kata Ganti Nama Diri Kedua Jamak)はこの一つだけ。

小学校の教科書に基づく注意点

祈りの中で、神に対して二人称で呼びかけるときには、”Engkau”を使わなければならない。

例1)× Semoga anda berkati kami.
例2)× Semoga kamu berkati kami.
例3)○ Semoga Engkau berkati kami.

“Engkau”以外の二人称の呼びかけは失礼に当たる。

ただし二人称ではなく、”Allah”, “Tuhan”, “Bapa”などの称号や、自分の神の固有の名前を使う事は全く問題ない。

三人称

彼、彼女、それ(三人称・単数)

三人称単数(Kata Ganti Nama Diri Ketiga Tunggal)には4種類ある。

dia(彼・彼女)

性別に関係なく第三者を表すのに使える。「彼」も「彼女」も、この言葉で表すことができる。人間や神にしか使えない。物には使えない。

ただし、日本語でも自分の大切にしているネコに対しては、「あの子」とか、「あいつ」と呼んで、人のように扱うように、マレー語でも同じ感覚で動物に対しても使われる事がある。通常は、動物に対して人称代名詞を使わずに、「あのネコ(マレー語: “kucing itu”)」と言う。

ia(彼・彼女)

“Dia”とほぼ同じ意味。人に対してにしか使えないと書いている文法書があるが、実際日常会話では物や動物に対しても使われている。実際辞書を見ると、「それ」という意味も含まれている、と書かれている。

“dia”と違って、”ia”は主語にしかなれない。文末に目的語として、また所有格として使う事はできない。(詳しくはページ下部の注意点の項にある例文を参考)

biliau(あの方)

年上の人や立場の高い人を尊敬の気持ちを込めて指すときに使われる。

baginda

王族に属する人を指すときに使う特別な三人称代名詞。

彼ら、彼女ら、それら(三人称・複数)三人称複数(Kata Ganti Nama Diri Ketiga Jamak)は一つだけ。

mereka

発音に注意!”mereka” の第一音節 “me” は、あいまいな “e” として発音する。2つめの “re” は、スマイル “e” になる。あえてカタカナで書くと「マレカ」か「ムレカ」になる。

人か物か、男性か女性かに関係なく使える。

小学校の教科書に基づく注意点

動物、物、場所、抽象名詞に”dia”や”ia”を使う事はできない

例1)× Menara KLCC tinggi. Ia terletak di KL.
例2)○ Menara KLCC tinggi. Menara itu terletak di KL.
日本語訳:KLCCタワーはとても背が高い。そのタワーはKLにある。

例1のように物に対して、人称代名詞は使えない。人称代名詞は人に対してのみ使える。ただし、”ia”の項目で説明したように、親しみや大切さの表れで、人のように呼びたい時に現地の人も人称代名詞を使う。

例3)○ Nama kucing saya “Tama”. Ia sangat comel.
日本語訳:わたしのネコの名前はタマです。あの子はとてもかわいいんです。

“ia”は動詞の目的語(objek)になれない

例1)× Kami tidak suka berkawan dengan ia.
例2)○ Kami tidak suka berkawan dengan dia/nya.
日本語訳:私たちは彼と一緒に遊ぶのが好きではない。

動詞の後の目的語には”dia”か”-nya”を使う。”-nya”については別の項目の人称代名詞の短縮形を参考してください。

受動態の動作主に”ia”は使えず、”-nya”か”dia”が使われる

例1)× Baju itu belum dijahit ia.
例2)○ Baju itu belum dijahitnya.
日本語訳:その服はまだ彼女によって縫われていない。

所有格(だれだれの物)には、”ia”が使えず、”-nya”が使われる

例1)× Adik ia berusia lima tahun.
例2)○ Adiknya berusia lima tahun.
日本語訳:彼の弟は5歳だ。

人称代名詞の短縮形

主な人称代名詞には短縮形が存在する。下の表がその一覧。

人称の種類主語(subjek)
として
所有者を表す時や
目的語(objek)として
一人称(私)ku--ku
二人称(あなた)kau--mu
三人称(彼・彼女)なし-nya

人称代名詞の短縮形は、ほかの単語とくっついて一つになる。一種の接頭・接尾辞とも言える。語気を弱めたり、文章を簡潔に短くして、無駄な反復を避けるのに用いられる。

特に三人称(彼・彼女)の短縮形の”-nya”には様々な機能がある。一番良く使われる短縮形だ。

ここでは、相手が話しかけてきた時や、マレー語の文章を読む時に見分けられる事を目標に、いくつかの例文を下にあげる。

一人称(わたし)”ku”

主格として使われる”ku-“。ただし文頭の主語としては使えない。

Buku itu saya beli.→Buku itu kubeli.
(日本語訳:この本は私が買った。)

× Ku beli buku itu. 意味は同じだが文法上間違い。

所有格として使われる”-ku”。

Ini buku saya.→Ini bukuku.
(日本語訳:これは私の本です。)

目的語として使われる”-ku”。

Taro mendidik saya.→Taro mendidikku.
(日本語訳:太郎が私を教育してくれた。)

Buku ini untuk saya.→Buku ini untukku.
(日本語訳:この本は私のためのものだ。)

二人称(あなた)”kau-“、”-mu”

基本の文章・注意点は上と同じなので、日本語訳は省略します。単語の前に主語として引っ付く場合は”kau-“を、単語の後ろに引っ付く場合は”-mu”を使う。

Buku itu kamu beli.→Buku itu kaubeli.
Ini buku kamu.→Ini bukumu.

Taro mendidik kamu.→Taro mendidikmu.
Buku ini untuk kamu.→Buku ini untukmu.

三人称(彼・彼女)”-nya”

基本の文章・注意点は上と同じ物なので、日本語訳は省略します。三人称短縮形は単語の前につく事はできない。主語として引っ付けたい場合は、接頭辞”di-“を使う。

Buku itu dia beli.→Buku itu dibelinya.
Ini buku dia.→Ini bukunya.

Taro mendidik dia.→Taro mendidiknya.
Buku ini untuk dia.→Buku ini untuknya.

神に関して使われる用法の注意点

人称代名詞の短縮形を神に関して使う事ができる。ただし、下の例文のように短縮形をハイフンで区切って、一文字目を大文字にする。

例1)”Inilah nama-Ku”, kata Tuhan.
日本語訳:「これが私の名前である」と神はお告げになる。

例2)”Oh Tuhanku, berkatilah hamba-Mu ini.”
日本語訳:(祈り)「私の神よ、このあなたの僕を祝福してください」

例3)Tuhan melindungi hamba-Nya.
日本語訳:神はご自分(彼)の僕を守られる。