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マレーシアは、異なる文化と宗教が共存する多様性に富んだ国です。さまざまな宗教が信奉されているマレーシアには、イスラム教徒が多く、イスラム教が国教にもなっています。
そんなイスラム教徒にとって重要な期間であるラマダンが毎年やってきます。今回の記事では、マレーシアのラマダンに焦点を当て、ラマダン中の断食からラマダンバザールまで見逃せないポイントを紹介します。
ラマダンの由来と意義
実は勘違いされていることが多いですが「ラマダン」に「断食」という意味があるわけではありません。ラマダンというのは、イスラム暦の月の名前で、9番目の月を「ラマダン」と呼んでいます。
ラマダンという言葉には「暑い月」という意味があるそうです。
そしてそのラマダンの月に行われるのが、イスラム教徒の義務とされる五行の1つである断食(サウム)です。ラマダンの月の約1か月の間、日の出から日没まで飲食を断つことで、精神的な浄化や自己研鑽に励みます。
イスラム暦の月は新月の観測を持って始まるため、断食開始予定日には、マレーシア全土の観測所で新月の観測が行われます。
宗教指導者たちが集まり、新月が観測された場合は、テレビ、ラジオ、SNSなどでラマダンの月の開始が宣言されます。
ラマダンの月と関係の深い休日
ジョホール、ケダ、マラッカの3州のみ、ラマダンの月の開始を告げる日が休日となります。これから約1か月続く断食期間を印づける休日です。
みいつの夜は、ムハンマドが神様から最初の啓示を受けたとされる日とされています。ジョホール、マラッカ、九州、ケダ、サラワク、サバを除く州で、ラマダンの月の17日に祝われます。
みいつの夜を過ぎた頃から、ハリラヤムードが高まり始め、街中にはハリラヤソングや飾り付けが盛大に行われるようになります。
ラマダンの月が終わると、イスラム教の一番盛大なお祭り、ハリラヤ・プアサがやってきます。
まったく飲まず食わず?
マレーシアでは、ラマダンの月に多くのイスラム教徒が断食に参加するので、国全体の日常生活が変化します。
断食を行うと言っても、24時間全く飲まず食わずということはありません。断食をするのは日の出から日の入りまでとなっているので、夜や早朝は逆に食べ放題です。
ラマダン月中は、日中は基本的に飲食ができず、なんと水でさえ口にしません。なのでイスラム教徒は厳しい生活を1か月間送ることとなります。マレーシアの暑い気候の下、特に屋外で仕事している人なんかは大丈夫かと心配になるほどです。
断食が始まる日の出前の食事を「スフール(Suhur)」と呼び、断食終了となる日の入り後の食事を「イフタール(Iftar)」と呼びます。
スフールでは、これから始まる断食に備えてエネルギーを補給するための栄養豊富な食事を摂ります。腹持ちが良く栄養価の高い食べ物を食べ、水分を多く摂取して日中の断食に備えます。
イフタールでは、日没と断食明けを告げるアザーンを聞いた後に、スープやデーツで胃を慣らしづつ夕食を楽しみます。
日中の空腹の発散と、家族や親戚と集まって食事会をすることもあるため、いつもの夕食よりもたくさん食べてしまうことが多いようです。
以前マレーシアのマクドナルドでこんな光景を見かけました。
私がとあるマクドナルドへ到着したのは日没まであと少しといったタイミング。ちょうどイスラム教徒の方がお店に殺到していました。断食明けの祈りが始まるとすぐに食事できるように、早めにレジを済ませて夕食をスタンバイしています。
そんな中で私も購入して席に座った訳ですが、周りは全員イスラム教徒。私はイスラム教徒ではありませんので、もちろん断食明けのアザーンを聞かずとも普通に食事ができます。
なんですが、周りがシーンとしていて、大人も子どもも、じっと目の前のポテトを見つめて固まっています。1日中飲まず食わずで頑張ってきて、目の前に美味しそうな夕食が並んでいて、喋る力も出ないという感じ。
いつもガヤガヤうるさいマレーシアのマクドナルドが静かになっているとか、ちょっと不思議な感じです。
子どもたちも教えを守って、泣くことも、ぐずることもなくアザーンを待っているわけで…。その横でさすがにムシャムシャ食べ始めるのはアレだなと思い、アザーンまで数分だったので待つことに。
その後、アザーンが聞こえてくるとみんな一斉にコーラに手を伸ばして、いつものマクドナルドの喧騒が戻ってきました。
日本では絶対見かけない光景ですよね。マレーシアはイスラム教国家であることを強く意識した出来事でした。
マレーシアのラマダンバザール
ラマダン期間中、マレーシア各地ではラマダンバザールが開催されます。午後3時ごろから屋台が賑わい始め、日没後に食べる食事が提供されています。断食中なので、基本はお持ち帰りで。
マレーシアのラマダンバザールでは、様々な種類の屋台が並び、豊富なジュース類、ミーゴレン、サテー、クエといった地元のグルメや伝統的な食べ物をリーズナブルな価格で堪能することができます。
ラマダンの月が近づくと、通常は何もないところに移動式屋台のテントが立ち並んで、即席のバザールがが開設されます。屋台が立ち出したのを見ると、ああ今年もこの時期がやってきたな、と感じます。
マレーシアの首都クアラルンプール周辺で有名なラマダンバザールは以下の通りです。
MRTカジャン線のTTDI (Taman Tun Dr Ismail)駅から徒歩圏内にあるラマダン・バザール。
MRTカジャン線・KLモノレールの星乃ヶ丘駅から徒歩圏内です。例年はあの有名なマクドナルドの周辺で開催されていました。
他にもあちこちで開催されています。お気に入りのラマダンバザールがあれば、コメント欄でシェアしていただけると幸いです。
マレーシアでは、日没後の食事を楽しむためのバザーラマダンだけでなく、日没後のビュッフェを開催するホテルやレストランが数多くあります。
ビュッフェはこの時期に特別に開催されるだけで (ビジネスチャンスですからね)、別にイスラム教徒だけしか利用できない訳ではありません。ビュッフェが好きな方には朗報ですね。
断食中のマレーシア人の日中の過ごし方
断食中とはいえ、仕事や学校は通常通り行わなくてはなりません(労働効率は格段に落ちている人が多そうに見えますが…)。
この時期のお昼休みは、ある意味イスラム教徒の方にはきつい時間になります。他の宗教の人たちがランチにいったり横でお弁当を食べているのを見ながら、自分は食べることができないからです。
そういう訳で、お昼休みには近くのショッピングモールに出かける人が多くなります。買い物をして気を散らし、時間を潰して乗り切るという訳ですね。
ちなみにマレーシアでは、ラマダン明けのお祝い (ハリラヤ) に向けて服を新調したり、家具やカーテンを買い換えたり、またケーキやお菓子をいっぱい揃えたりして、盛大なお祝いの準備を行います。そのためこのラマダンのお昼休みを利用して、ハリラヤ向けの買い出しを行うという方も多いようです。
ラマダン期間中の注意点
ラマダン期間中には、さまざまな手続きや対応がいつも以上にゆったりしていることがありますが、カリカリせずに相手のペースに合わせてあげましょう。
日没前後の時間帯には、家路を急ぐ人で道路や公共交通機関が混雑することもあります。時間に余裕を持った移動を心がけたいものです。
また過去には日本大使館から注意喚起がなされたことがありますが、ラマダンの月にはテロへの警戒も必要な場合があります。金曜日の礼拝を妨害するような動きがある可能性もあるようです。
また、バザーラマダンやパサマラム(夜市)が各地で開催されますが、スリやひったくりや子どもの誘拐などの犯罪に巻き込まれないように、くれぐれもお気をつけください。
ラマダン期間中には、特にマレー系のレストランや店舗の営業時間が変更になることがあります。こうした営業時間の変更はGoogleマップなどに反映されていないことも多く、店の前まで来てみたら閉まってたということも。
ラマダンが終わると…
イスラム教徒が断食を行うラマダンの月が終わると、いよいよ断食明けの大きなお祭り、ハリラヤ・プアサがやってきます。
イスラム教の最も盛大なお祭りハリラヤ・プアサについてはまた別のページで。